Vol.14: 介護事業所におけるコロナ問題Q&A
- 2020年8月 Legal Care News Vol.14 PDFで見る
今回は、介護事業所におけるコロナ問題について、QA形式で取り上げました。
ご家族への面会対応について
緊急事態宣言が解除され、頻繁にご家族からご利用者との面会希望を受けています。そこで、これまでご利用者の看取り時や体調急変時などに制限していた利用者と家族との面会について、面会制限を緩和しようと考えています。もっとも、面会によってご利用者がコロナに感染したり、施設内でコロナ感染が拡大してしまったような場合、施設側が法的な責任を負わないか、とても心配です。どのように考えれば良いでしょうか。
ワクチンの普及がいつとなるかは具体的な時期も見えず、介護事業者としては、引き続きご利用者の安全のため、コロナ感染防止のための体制維持は不可欠となっています。
もっとも、面会制限の長期化は、施設に対するご利用者やご家族の不満不信を強く招く面もあり、介護事業者としては対処が悩ましい問題かと思います。
法的な視点からは、介護施設における家族等の面会について、厚生労働省老健局の「社会福祉施設等における感染拡大防止のための留意点(その2)」、全国老施協発令和2年5月29日発第276号通知内容などを参考に、安全配慮義務の履行のため、右記のような対処での緩和が考えられます。
また、万一のコロナ感染時の法的責任追及に備えて、加入中の賠償保険について、ご利用者がコロナに罹った場合に適正な保険金が支払われるかを必ず確認しましょう。
面会者の条件
- 過去2週間内に感染者、感染の疑いがある者、濃厚接触者との接触がないこと
- 新型コロナウイルス感染症に感染していないこと(過去に感染し回復した場合には、施設職員等へご相談いただくこと)
- 過去2週間内に発熱がないこと
- 検温により平温より高くなっていないなど健康状態に問題がないこと
- 面会人数を最小限とすること
面会方法
- なるべく居室での面会を避け、密閉されていない別室を設けるようにすること
- マスク着用を必須とする
- 施設入所時及び面会後の手指消毒を必須とすること
- あらかじめ施設で定めた短時間内とすること
- 手を握ることは事前及び事後に手指消毒を着実に行えば差し支えないが、抱擁は避けること
- 面会者が自身の涙や鼻水を触らないよう注意すること。また、面会者が利用者の涙や鼻水を拭う等しないよう注意すること
面会者には、上記を内容とする面会申込書を取り付けた上で、必ず検温の上で面会を実施してもらうことです。
これらの説明を行わず、結果として施設内でご利用者のコロナ感染が拡大すれば、法的責任を追及される可能性が生じます。なお、改めて緊急事態宣言などの発令があった場合は、すぐに面会を中止できるようにすることが必要となるでしょう。
(書式例)面会申込書
感染防止意識の低い従業員への対応について
職員が、休日にいわゆる三密行動、コロナ感染リスクの非常に高い過ごし方をすることがわかりました。多人数でマスクもせずにカラオケをしたり、ライブハウスでのライブ鑑賞のようです。
事業所としてはご利用者がコロナに感染しないよう、細心の注意を払って運営をしているのですが、このようなコロナ感染防止の意識が低い職員にとても困っています。事業所として、どのようにすれば良いのでしょうか?
まず、押さえるべきは、「休日の過ごし方について、原則として、雇用主はそれを禁止する業務指示はできない」ということです。
そのため、休日にコロナ感染リスクの高い行動を取った職員に対して、労働契約上の不利益処分(懲戒処分、降給)や解雇処分などは困難です。
もっとも、ある職員が感染リスクの高い行動をしたことを把握しながら、職員をそのまま労働させてしまうことは、他の従業員や利用者に対する安全配慮義務の観点から非常に問題です。
そのため、このような職員に対しては、一定期間の自宅待機(平均賃金の全額又は60%以上)や配置転換などで対応することになります。
他、労務管理に関するご相談は随時お受けしています。お気軽にお問合せください。
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弁護士法人リーガルプラス代表弁護士 東京弁護士会所属
介護法務研究会(C-LA)代表
谷 靖介(たに やすゆき)
石川に生まれ、東京で幼少期を過ごす。1999年明治大学法学部卒業、2004年弁護士登録。日本弁護士連合会の公設事務所プロジェクトに参加し、2005年、実働弁護士ゼロ地域の茨城県鹿嶋市に赴任。翌年には年間500名以上の法律相談を担当し、弁護士不足地域での法務サービスに尽力する。弁護士法人リーガルプラスを設立し、複数の法律事務所を開設し、介護医療事業への法務支援に注力。経営者協会労務法制委員会講師を務めるなど、講演経験やメディア出演も多数。