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2022年9月号: 令和4年10月1日施行の改正育児・介護休業法の実務と法的留意点について

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令和4年10月1日施行の改正育児・介護休業法の実務と法的留意点について

最近の人事労務分野において注目すべき法改正として、令和3年6月に改正され、令和4年4月から3段階で施行されている育児・介護休業法があります。今回は、2段階目の令和4年10月1日施行法の実務と留意点をQ&A方式で解説します。

育児・介護休業法はどのようなことを目的としているので
しょうか。

育児や介護をする労働者の「就労」と「出産や子育て」、あるいは「就労」と「介護」の二者択一構造を解消し、仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)を実現することを目的としています。今回の改正においては、出産や子育てによる従業員の離職を防ぎ、男女ともにより就労と子育てを両立できるようにすることが主な目的とされています。

令和4年10月1日施行の育児休業の分割取得とはどのような制度でしょうか。

改正前の育児休業制度は、原則として分割での休業取得ができませんでした。今回の改正により、原則として子どもが1歳までは2回までの分割取得が可能となります。また、改正前は、1歳以降に育児休業を延長した場合の育休開始日が、各期間(1歳から1歳6か月、1歳6か月から2歳)の初日に限定されていたため各期間開始時点でしか夫婦交代ができませんでした。今回の改正により、休業開始日が柔軟化されたため、各期間途中でも夫婦交代が可能となります。

令和4年10月1日施行の産後パパ育休(出生時育児休業)とはどのような制度でしょうか。

現行法のいわゆるパパ休暇においても、新設された産後パパ育休においても、子どもの出生後8週間以内の期間内に取得する育児休業といった点で共通します。新設の産後パパ育休の特徴としては、子どもの出生後8週間以内のうち4週間まで分割して2回の取得が可能となります(※育休とは別に取得可能です)。
また、労使協定を締結している場合に限り、労働者が合意した範囲内で休業中に就業可能となります。コロナ禍でテレワークを導入する企業も増えてきている状況にも配慮され、より仕事と生活の調和が重視された制度になっているといえます。

企業として講ずべき措置はどのようなものでしょうか。

今回の改正に伴い、現行制度のパパ休暇の制度はなくなります。企業としては、従業員が円滑に育児休業の申出ができる職場環境を整え、法改正に対応した就業規則等の社内規程の整備が義務づけられます。また、雇用保険法も改正され、出生時育児休業給付金の運用も開始されるので、こうした案内を従業員へ行うことも必要となります。
仕事と生活の両立しやすい職場環境は、企業にとっても優秀な人材の確保や定着につながるメリットがあるものです。企業としては、職場における仕事と生活の両立のための制度とその制度を利用しやすい環境づくりを進めていくことが重要となります。

【船橋法律事務所】
所属弁護士:神津 竜平(こうづ りゅうへい)

プロフィール
國學院大学法学部卒業、明治大学法科大学院修了後、弁護士登録(千葉県弁護士会)。主に、交通事故、労災事故、相続、離婚、中小企業法務(労務問題)を中心に活動を行う。趣味は旅行、釣り。

解決事例「無職者の休業損害の請求」

【事案】
Iさんは、相手方保険会社から提示された賠償金額に納得いかないとして相談にいらっしゃいました。事故態様は、Iさんがバイク、相手方が自動車の右直事故(交差点での右折車と直進車の衝突事故)でした。Iさんの乗っているバイクが直進していたところ、相手方車が交差点左方から右折して来てIさんのバイクと衝突しました。過失割合はIさんに10%ありました。その事故によりIさんは右膝半月板損傷の傷害を負いました。相手方保険会社が提示している賠償額の内容を確認したところ、最終支払額(総損害-過失負担分-既払額)は約20万円でした。低額な原因は、慰謝料が約50万円と傷害の程度に比して低いことに加え、休業損害が0円となっていることにありました。
Iさんは、事故のちょっと前に前職を自己都合退職し、新しい就職先を探している矢先に事故に遭いました。それが原因で求職活動ができなかったのであるから休業損害が0円であることにIさんは納得できませんでした。Iさんは休業損害を請求できるでしょうか。

休業損害とは何ですか?

休業損害とは、事故による療養のために休業し、又は十分に稼働できなかったことによる収入の喪失をいいます

無職者は収入がないので休業損害を請求できないのではないですか?

原則は請求できません。なぜならば、無職者には収入がなく、収入の喪失、すなわち休業損害が認められないからです。もっとも、次の場合には、無職者でも休業損害を請求し得る場合があります。それは、労働能力及び労働意欲があり、療養の期間中に再就職したであろう蓋然性が認められる場合です。

それはどうやって立証するのですか?

事案により様々です。本件では、前職の給与明細、市の就労支援を受けていたことが分かる資料及び現職の収入状況の分かる資料を相手方保険会社に提出しました。前職の給与明細はIさんに労働能力があったことを、就労支援を受けていたことが分かる資料はIさんに就労意欲があったことを、現職の収入状況の分かる資料は、Iさんに就労の蓋然性があったことを示すために用いました。

その結果はどうなりましたか?

Iさんの休業損害が認められました。前職の給与を参考に1年分の休業損害である約250万円を請求することができました。

おわりに

本件は、休業損害のほかに慰謝料額も約50万から約150万円に増額しました。そしてその結果、最終支払金額は約20万円から約340万円へ増額し、無事に事件が解決しました。
本件では、弁護士に相談しないまま示談をしていたらIさんは約320万円もの損をしていた可能性があります。そうならないように、相手方保険会社との示談に不安に感じたらまずは弁護士に相談してみることをお勧めいたします。

【津田沼法律事務所】
所属弁護士:永井 龍(ながい りゅう)

プロフィール
立教大学法学部卒業、法政大学法科大学院修了。弁護士登録以降、東京都内の弁護士事務所で一般民事や家事事件などの分野で執務。現在は津田沼事務所で活動。趣味は写真撮影、好きな言葉は「正直」。

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