2024年6月号: 共同親権の導入について
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共同親権の導入について
1.はじめに
令和6年5月に民法等の一部を改正する法律が成立し、共同親権の制度が導入されることが決まりました。改正法は、令和8年までに施行されます。
共同親権制度の導入により、離婚事件・親子関係の紛争のあり方が大きく転換することになります。
2.制度の概要
これまでの制度では、父母が結婚している間は共同親権となり、離婚した後は父母どちらかの単独親権となるという仕組みがとられていました。
今回の改正法では、離婚時に「父母の双方又は一方を親権者と定める」こととされ、離婚後も共同親権にするという選択肢が加えられました。単独親権・共同親権いずれを選ぶかは、父母が話し合って決めるか、それができなければ裁判所が決めるものとされています。
共同親権が選択された場合、子に関わる決定は、基本的に父母が共同して行うこととされます。離婚後も父母で協議することが必要になるのです。
共同親権を選んだ場合でも、片方の親権者が単独で親権を行える場合としては、①他の一方が親権を行うことができないとき②子の利益のために急迫の事情があるとき③監護及び教育に関する日常の行為に係る親権の行使が定められています。
3.共同親権のメリット・デメリット
共同親権をとるメリットは、離婚後も父母双方が子に関わりを持ち続けられる点です。これまでは、親権者でない親と子との交流が途絶えてしまったり、養育費の支払いがストップしてしまったりする例も多く見られました。共同親権をとることにより、そういった親にも子にも望ましくない事態を減らすことが期待されます。また、離婚時に激しい子の奪い合いが起きることの緩和につながることが考えられます。
一方、デメリットとしては、これまでは、離婚によって逃れることができた、配偶者からのDVや虐待による支配が、離婚後も続いてしまう懸念があります。DV等の証拠がある場合には、共同親権が認められない可能性が高いですが、酷いDV等があるにもかかわらず証拠がない事案も少なくありません。
また、離婚後も子を巡る紛争が頻発し、子が巻き込まれてしまうことも懸念されます。進学や病気の治療など子どもによって重要なことがらについて、父母で合意することができず、判断が遅れてしまうことになれば、子にとって大きな不利益です。
父母が合意できないことがらについては、裁判所の判断を仰ぐことが想定されていますが、スピーディーな判断を得ることは難しいでしょう。
親権は「子の利益のために行使しなければならない」とされているものです。今後、共同親権の制度が運用されるにあたっては、何よりも子のためということが重視される必要があります。
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【上野法律事務所】
所属弁護士:三浦 知草(みうら ちぐさ)- プロフィール
- 中央大学法学部法律学科卒業。弁護士登録後は主に、交通事故、離婚・不貞問題、労働事件、刑事事件などを中心に、ご依頼者様に寄り添いながら、お気持ちや意見をしっかり代弁した上で納得のいく解決に導けるよう丁寧な活動を行う。趣味は読書、野球・ボクシング・相撲のTV観戦、好きな言葉は「命あっての物種」。
交通事故解決事例
1 事案の概要
Xさんは、優先道路を走行中、十字路において左側から相手方が直進してきたことから衝突し、頸椎捻挫等の怪我を負ったことから当事務所にご相談の上ご依頼されました。本件事故では運転手であったXさんの他にも同乗者として妻であるYさんとお子様のZさん(当時3歳)がおりました。今回はお子様であるZさんについてお話したいと思います。
Zさんは、頚椎捻挫の診断を受け、約3か月間通院しました(実通院日数は8日)。両親であるXさんYさんよりも早く治療が終了したことから先行して上記通院期間を前提に相手方(相手方保険会社)と交渉を開始しました。
しかし、相手方(相手方保険会社)とは主として入通院慰謝料の点で折り合いが付かずに、交渉を断念し、紛争処理センターを利用することとしました。
2 紛争処理センターとは
紛争処理センターとは、自動車事故の被害者と加害者又は加害者が加入している保険会社や共済組合等との示談をめぐる紛争の解決を図るべく、双方の間に立って、法律相談・和解あっせん・審査手続を無料で行っている機関となります。もちろん、弁護士を代理人とせずとも本人での利用も可能です。本件では、和解あっせんの利用をしました。通常、和解あっせんでは、あっせん日の調整後、月1回程度の頻度で期日が開かれ、あっせん人(センター担当弁護士)のもとで当事者双方から話を聞いて進めていくものとなります。
3 本件の事案
今回、折り合いの付かなかった入通院慰謝料とは、交通事故によって通院等を強いられていることによる精神的な損害に対する慰謝料となります。弁護士が介入した場合、過去の裁判例に基づいて設定された基準(弁護士基準、裁判基準と呼ばれることが多いです)で算定されるのが通常となります。もっとも、通院が長期にわたる場合、通院期間(治療開始日~完治または症状固定日までが基本)ではなく、症状や治療内容等を考慮して実際の通院日数の3倍程度を慰謝料の算定の通院期間とする場合も例外的にあり得ます(いわゆる3倍ルール)。
本件では相手方(相手方保険会社)からは主として通院頻度が少ないことを理由として上記3倍ルールを主張されておりました。当方と相手方とでは入通院慰謝料のみでも当方(約47万円)と相手方(約10万円)には金額の差異があります。
当方は、そもそも通院が長期ではないこと、本件と同様の事案で3倍ルールを適用している事例がほとんどないこと等を主張しました。結局のところ、あっせん人からはほとんど当方の主張が認められたあっせん案が出され、合意に至りました。
4 おわりに
本件のように通院頻度が少ないことのみをもって3倍ルールを適用して相場より低い入通院慰謝料を算定し提示する保険会社も少なくありません。適切な損害賠償の提示がなされているのか、まずはお気軽に弁護士にご相談ください。
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【千葉法律事務所】
所属弁護士:大﨑 慎乃祐(おおさき しんのすけ)- プロフィール
- 専修大学法学部法律学科卒業、専修大学法科大学院法務研究科修了。弁護士登録以降、ご依頼者様のトラブル内容に対し、解決するための法的根拠や理由を丁寧に分析し、しっかりした主張を展開して解決に導けるよう、交通事故や一般民事、刑事事件などの分野で活動を行う。趣味はサッカーやジョギング、好きな言葉は「文武両道」。