介護ニュースレター

Vol.01: 問題職員の対策について

2018年9月 Legal Care News Vol.01 PDFで見る

介護事業所では、人員基準をふまえたサービス提供責任者・介護福祉士・生活相談員の独特な労務管理が必要とされます。
リーガルプラスでは、多くの事業者様から職員トラブルのご相談をお受けしています。
今回は、職員トラブルの典型的な事例について、QAで解説をしました。

問題職員を辞めさせたい

利用者や他の職員から評判がとても悪く、仕事中の素行や態度が悪い職員がいます。管理者としては、できれば辞めてもらいたいと思っています。どのように辞めさせられますか?解雇はできますか?

その職員に対して、まずは、上司・責任者が主体となって業務改善指導、注意、命令などを進めることが必要です。指導注意は書面によるものとしましょう。
また、本人へ日報による改善実施を報告させることや、研修の義務化なども必要です。
また、辞令による配置転換も考慮しましょう。
これら対処中に本人が退職意思を示した場合、退職合意書の取り付けを行い、法的なトラブルの拡大を予防する必要があります。
強引な懲戒解雇は、解雇理由として不十分で、トラブルの拡大や職員からの裁判を招くこともあります。
懲戒解雇には丁寧な準備や解雇事由の積み重ねが不可欠ですので、弁護士などの専門家に相談をしてください。

セクハラ問題が起きてしまった

ある施設内の主任職員によって、新人職員に対するセクハラ問題が起きてしまいました。職場の懇親会時に、嫌がる職員に対して主任が性的な発言を繰り返したというものです。
こうしたセクハラ問題が起きた場合、事業者として、被害者である職員に責任を負うことはありますか?また、どのように対処をすべきでしょうか?

セクハラの事前対策としては、相談窓口・委員会・諸規定の整備・研修教育などが重要となります。
そして、事業者は安全配慮義務に基づき、セクハラ防止義務があり、セクハラ発生時には被害者の職員に対して、賠償義務を負う可能性があります。
セクハラを見て見ぬフリをしたり、加害者を組織で庇うようなことをすると問題が大きくなるので、特に注意が必要です。
セクハラが起きた場合、被害者、加害者、他の職員から丁寧にヒアリングを行い、事実調査を行います。
そして、セクハラが事実の場合、被害者の意向をふまえながら、加害者に対する懲戒処分が必要となってきます。

うつ病で欠勤を続ける職員への対処

ある施設で働き始めて半年の職員が、「認知症や要介護度4・5の利用者の身体介護でストレスが凄い」「仕事が原因でうつ病になった」と主張してきて、その職員の言い分が記載されたメンタルクリニックの診断書が提出されました。その後、一方的に欠勤を続けています。このような事態にどうすればよいでしょうか。

本人やメンタルクリニックの医師が仕事を原因としたうつ病と主張していることと、それが労災にあたるかどうかはイコールにはなりません。労災にあたるうつ病になるかどうかは厚労省の認定基準などでも厳しい条件が示されています。ストレートに業務起因性によるうつ病だとの断定ができないことも多いのです。
労災申請を希望した場合はそれを妨害することは避けるべきですが、他方で、労災によるうつであることを前提とした対応もすべきではありません。このような場合、就業規則の活用が重要となり、就業規則で事業者側の指定する医師への診察を命じられるかもポイントです。
そして、業務起因性が乏しいうつ病の場合、休職処理を進め、自動退職の適用の説明や一定の退職金支給による合意退職なども対策となります。

弁護士法人リーガルプラス代表弁護士 東京弁護士会所属
介護法務研究会(C-LA)代表
谷 靖介(たに やすゆき)
石川に生まれ、東京で幼少期を過ごす。1999年明治大学法学部卒業、2004年弁護士登録。日本弁護士連合会の公設事務所プロジェクトに参加し、2005年、実働弁護士ゼロ地域の茨城県鹿嶋市に赴任。翌年には年間500名以上の法律相談を担当し、弁護士不足地域での法務サービスに尽力する。弁護士法人リーガルプラスを設立し、複数の法律事務所を開設し、介護医療事業への法務支援に注力。経営者協会労務法制委員会講師を務めるなど、講演経験やメディア出演も多数。

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