Vol.5: 義父母の介護で遺産がもらえる…?民法改正と親族の介護
- 2019年1月 Legal Care News Vol.5 PDFで見る
今回のニュースレターでは、民法改正に伴う遺産分割制度の変更点について取り上げます。
特別寄与制度導入
故人への介護の貢献に関しては、遺産分割にあたり、法的には相続人のみが、寄与分の算定として考慮されていました。
平成30年度民法改正(2019年7月から施行部分)によって、相続人以外にも被相続人への貢献を考慮する「特別寄与制度」が導入されました。
改正民法「特別の寄与」条文
(改正民法)第九章 特別の寄与
第1050条
1.被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(相続人、相続の放棄をした者及び第八百九十一条の規定に該当し又は廃除によってその相続権を失った者を除く。以下この条において「特別寄与者」という。)は、相続の開始後、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(以下この条において「特別寄与料」という。)の支払を請求することができる。
2.前項の規定による特別寄与料の支払について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、特別寄与者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から六箇月を経過したとき、又は相続開始の時から一年を経過したときは、この限りでない。
3.前項本文の場合には、家庭裁判所は、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、特別寄与料の額を定める。
4.特別寄与料の額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない。
5.相続人が数人ある場合には、各相続人は、特別寄与料の額に第九百条から第九百二条までの規定により算定した当該相続人の相続分を乗じた額を負担する。
改正民法による影響
これにより、舅姑などへ無償で療養介護や家業の手伝いを支援した場合、相続人でなくても寄与分が認められるようになります。
特別寄与者になれるのは、相続人ではない親族と定められています。親族とは、配偶者、6親等内の血族、3親等内の姻族であり、子の配偶者はこの中に含まれます。
また、特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から6ヵ月以内又は相続開始の時から1年以内に特別寄与料を請求しなければならず、請求期間がシビアな構成となっています。
特別寄与料が算定されることで、被相続人の意思をふまえた相続に結びつきやすい、介護や家業の支援で被相続人に尽くした人に公平に財産を渡せるなどのメリットがあります。他方で、遺産から特別寄与料が差し引かれ、相続人の取得できる相続財産が減るという面もあります。
今後、故人と離れて暮らした相続人が遺産取得に際して、特別寄与者へ一定の譲歩をせざるを得ない状況が生まれてくることが想定されます。
現時点で特別寄与料の算定方法は決まっていませんが、介護の場合、介護の実従事時間などから計算されることが想定されます。
相続人ではない親族は、義父母などの介護にかけた時間をしっかりと記録に残しておくべきといえましょう。
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弁護士法人リーガルプラス代表弁護士 東京弁護士会所属
介護法務研究会(C-LA)代表
谷 靖介(たに やすゆき)
石川に生まれ、東京で幼少期を過ごす。1999年明治大学法学部卒業、2004年弁護士登録。日本弁護士連合会の公設事務所プロジェクトに参加し、2005年、実働弁護士ゼロ地域の茨城県鹿嶋市に赴任。翌年には年間500名以上の法律相談を担当し、弁護士不足地域での法務サービスに尽力する。弁護士法人リーガルプラスを設立し、複数の法律事務所を開設し、介護医療事業への法務支援に注力。経営者協会労務法制委員会講師を務めるなど、講演経験やメディア出演も多数。