介護ニュースレター

Vol.8: 事故や不祥事発生時の危機管理対応を考える

2019年4月 Legal Care News Vol.8 PDFで見る

今回のニュースレターでは、事故や不祥事が発生した場合のメディア対応についてお伝えします。

はじめに

企業などで事故や不祥事が起きた際、責任者の記者会見やマスコミ対応を見て、「これはひどいな……」「いったい何を考えているんだ?……」と感じたものはありませんか?ここ数年ですと、多くの方が某大学のアメフト事件を思い出すかもしれません。
先日、ある報道番組で、サ高住の施設職員が利用者に暴言を吐いたり身体を叩いたりする様子の動画が取り上げられていました。虐待の様子を撮影した動画は、利用者のご家族などが利用者の居室内に設置したカメラなどで録画されたものではないかと思います(真偽は不明ですが)。そして報道のトーンは、施設の管理責任を追及するものでした。番組のリポーターが、通勤途中の施設のオーナーの車両に乗り込み、質問攻めにしていました。矢継ぎ早の質問に施設のオーナーが感情的に怒ってしまい、声を荒げる場面や、職員の虐待を正当化していると受け止められる発言が、全国メディアで施設の実名入りで報道されていました。
事故や職員の不祥事などの危機が起きた場合、このような対応をミスすると、関係者をより怒らせ、時には訴訟等の法的措置に繋がってしまうこともあります。
ネットによる情報拡散が速い現代社会では、「起こったこと(事実)は隠せない」「瞬時に情報は拡散する」という特徴があります。
経営者・責任者としては、上記のような危機管理対応の失敗は、他山の石とすべきではないでしょうか。

一. 介護事業所の危機管理

危機管理の多くの事例では、リスク発生後のメディア(ステークホルダー)対応の失敗で「二次被害」としてダメージが劇的に拡大することがあります。
特に、事故、虐待、職員の不祥事などが注目を浴びやすい介護事業所では、時に、危機発生後のメディア対応は重要となります。
上記のケースでは、職員による利用者への虐待という不祥事に加えて、経営者の対応の不味さが挙げられます。

二.危機管理のポイント

危機管理(リスクマネジメント)広報はそれだけで一つの専門領域ですが、重要な要素は、情報公開(主にメディア対応)の迅速性(スピード)と対策の適切性です。危機が大きな時には、メディアが記者を派遣したり、謝罪のための記者会見を開く必要に迫られることもあります。事故や不祥事発生時に記者の取材を受ける際は、

  1. 取材に答えた内容の一部しか掲載されないこと
  2. 発言した内容がストレートに相手に受け入れられないことがあること
  3. 記者が取材のストーリーをあらかじめ決め、自らの欲しい印象、コメント、映像だけを目的に取材する場合があること
    (上記ケースでは、感情的で理不尽な責任者の対応、職員の管理ができていない酷い施設であるとの印象)

といった点を意識する必要があります。

そして、取材を受ける際のポイントとしては、以下となります。

  1. 落ち着いて答える
  2. 声のトーン、口調、大きさなどに気を付ける
  3. 伝えるメッセージは、シンプルにメディアの向こう側にいる読者や視聴者の視点に立った表現であるかを意識する
  4. 最初に重要なメッセージを伝えて強調する
    (「繰り返しになりますが、今後施設として~」)
  5. それぞれの質問を慎重に聞き取り、必要な時には質問を聞き返す
  6. 不利なことや正確に知らない質問でも、平静さを失わず対応する

三.さいごに

介護事業所が事件や事故を起こしてしまった場合や不祥事を起こしてしまった場合、地域での評判やダメージを最小限に留めるため、危機管理広報対策、ダメージ・コントロールが重要といえます。
弁護士としては、取材担当者への法的責任の説明、利用者やそのご家族への説明、謝罪対応、お見舞金や賠償金のお支払いなどについてサポートも可能です。

弁護士法人リーガルプラス代表弁護士 東京弁護士会所属
介護法務研究会(C-LA)代表
谷 靖介(たに やすゆき)
石川に生まれ、東京で幼少期を過ごす。1999年明治大学法学部卒業、2004年弁護士登録。日本弁護士連合会の公設事務所プロジェクトに参加し、2005年、実働弁護士ゼロ地域の茨城県鹿嶋市に赴任。翌年には年間500名以上の法律相談を担当し、弁護士不足地域での法務サービスに尽力する。弁護士法人リーガルプラスを設立し、複数の法律事務所を開設し、介護医療事業への法務支援に注力。経営者協会労務法制委員会講師を務めるなど、講演経験やメディア出演も多数。

一覧へ戻る

0120-13-4895

お問合せ