介護ニュースレター

Vol.29: 介護事業所におけるSNS使用の注意点

2024年5月 Legal Care News Vol.29 PDFで見る

SNSは介護事業所の広報活動や連絡ツールとして、とても便利な反面、使用方法を誤ってしまうと、利用者や職員の権利を侵害したり、法的トラブルが発生することもあります。
介護事業所におけるSNS使用に潜むリスクやトラブル防止のポイントをまとめました。

1、はじめに

介護事業所では、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を広報活動、利用者との連絡、職員間の連絡などに積極的に活用しています。例えば、InstagramやFacebookを使って施設の雰囲気やスタッフの業務風景や利用者との交流を載せたり、X(旧Twitter)で事業所のイベントや最新情報を告知するなどの使い方が挙げられます。
SNSは介護事業所の広報活動や連絡ツールとしては、とても有用な反面、使用方法を誤ってしまうと、利用者や職員の権利を侵害し、また、法的トラブルが発生することもあります。
ここでは、介護事業所におけるSNS使用に潜むリスクやトラブル防止のポイントを解説していきます。

2、SNSによるハラスメント

LINEは電話・メール以上のコミュニケーションツールとして日常に定着しています。手軽に使用できる反面、LINEのやり取りがセクシャルハラスメントやパワーハラスメントになってしまうケースも増えています。例えば、多数の職員が加入するグループLINE内で全員に共有する必要のない業務ミスを事細かに示し、謝罪を強要するようなものです。
また、イジメや仲間はずれなどもハラスメントにあたります。男性職員が女性職員に対してLINEで性的な連絡をすればセクハラになります。

3、個人情報の侵害

Instagramの画像に利用者の顔が写り込む、スタッフがプライベートのX(旧Twitter)で利用者の個人名や個人が特定できるエピソードを書く、といった事態は個人情報の漏えいになります。
利用者の写真をご本人(や家族)の承諾がないまま無断で投稿することは、個人情報の目的外の利用です。また、肖像権やプライバシーの侵害にも該当します。プライバシー侵害や個人情報の漏えいが発生すると介護事業所に対する信頼も大きく低下しますので、細心の注意が必要です。

4、介護事業所の問題行為が明らかに

SNSを通じて介護事業所の問題が明らかになり、炎上につながるらようなケースがあります。例えば、職員に対する管理者のパワーハラスメントやセクシャルハラスメント、利用者への暴行や虐待、職員の酒気帯び運転、職員間の不倫、違法な事業所運営や行政指導の不遵守などです。
X (旧Twitter)で投稿をされることで世間の注目を浴び、炎上につながることがあります。
このような問題がSNSで晒されてしまえば、介護事業所の信頼は大きく低下します。また、介護事業所の問題行為を広く知らしめるようなSNSの使用も問題です。
このようなSNSの使用は事業所の信頼を低下させるものであることを職員に丁寧に説明しておくことが重要です。

5、SNSを原因としたトラブルを未然に防ぐための3つのポイント

1 SNS利用ルールの作成

広報のためSNSを積極的に利用する場合、炎上や個人情報の漏えいを防ぐためにも、担当者、投稿事項のガイドラインや禁止事項を作成する必要があります。

2 職員に対する教育

現在では、プライベートを含めて大半の人がスマホを持ち、複数のSNSを使用しています。
実際に職員が利用している全ての個人SNSアカウントのチェックができない以上、「SNSで禁止されること」を教育すべきです。特に、仕事ではプライベートでのやり取りの感覚と異なる感覚でSNSを使用する必要があることを理解させ、仕事で知った個人情報や事業所の秘密情報を守ることが職員の義務となり、違反すれば、民事・刑事責任や職員個人への懲戒処分などの対象となることを丁寧に教育で伝える必要があります。

3 写真や動画利用は承諾を

InstagrmやFacebook等で画像の投稿、Youtubeに投稿などする際は、被写体である利用者やご家族の承諾を頂くことが重要です。また、何の媒体に、何の写真や動画がどのように公開されるかを丁寧に説明する必要もあります。利用者が画像や動画内に写り込んでしまうような場合、モザイク加工などもお勧めです。
職員の氏名や写真も無断での掲載はプライバシー、肖像権侵害に該当しますので、入社や使用時に個別説明が望ましいでしょう。

弁護士法人リーガルプラス代表弁護士 東京弁護士会所属
介護法務研究会(C-LA)代表
谷 靖介(たに やすゆき)
石川に生まれ、東京で幼少期を過ごす。1999年明治大学法学部卒業、2004年弁護士登録。日本弁護士連合会の公設事務所プロジェクトに参加し、2005年、実働弁護士ゼロ地域の茨城県鹿嶋市に赴任。翌年には年間500名以上の法律相談を担当し、弁護士不足地域での法務サービスに尽力する。弁護士法人リーガルプラスを設立し、複数の法律事務所を開設し、介護医療事業への法務支援に注力。経営者協会労務法制委員会講師を務めるなど、講演経験やメディア出演も多数。

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