2020年10月号号: 企業に与える民法改正の影響について
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企業に与える民法改正の影響について
2020年は、企業活動において大きな転換点といえます。
最も大きな影響を与えたのはコロナウイルスの感染拡大と思いますが、4月1日には120年ぶりに改正された民法の債権法分野の施行がありました。
民法改正は、今までも弊所ニュースレターのほか、インターネット上にも多くの情報があり、目にされたことが多いと思いますので、影響の大きい点について簡単に取り上げます。
1 保証契約の規制強化
(1)保証上限の記載のない個人の根保証契約は無効
賃貸借契約の保証人や入院時の保証人、会社入社時の身元保証等、保証金額の上限が規定されていない根保証契約といわ
れるものがありましたが、これからは、上限額の定めのない個人(法人が保証する場合は別)の根保証契約は無効となります。
(2)個人が事業用融資の保証人になる場合、公証人による意思確認を要する
個人が事業用融資の保証人になる場合、公証人による意思確認を経ない保証契約は無効となります。ただし、この「個人」には、主債務者が法人である場合の当該法人の役員や議決権の過半数を有する株主や、主債務者が個人である場合の、共同事業者や主債務者の事業に現に従事している主債務者の配偶者は含まれません。
2 賃金の消滅時効期間の伸長
民法の改正により、消滅時効期間は原則として5年となり、それを受けて、労働基準法でも改正があり、賃金債権も原則5年
となりました。
ただし、使用者側の対応が必要であることから、当面の間は3年とされました(5年後に見直し予定)。令和2年4月1日以降に発生する賃金は3年経たないと時効消滅しません。今まで未払残業代は2年で消滅事項が成立しましたが、令和2年4月1日以降に発生する分は、3年経たなければ消滅時効は成立しません。つまり請求される残業代は1.5倍に増えます。
労働基準法上、原則は5年とされていることから、見直し後はこの期間が5年となる可能性が高いといえます。残業代請求対策は、待ったなしで行わなければなりません。
なお、有給休暇は今まで通り2年で消滅します。
3 瑕疵担保責任から契約不適合責任へ(売買・請負)
従前瑕疵担保責任といわれていたものが契約不適合責任に改められました。
「売買や請負の目的物が通常有すべき品質を欠くか」ではなく、当事者間で定めた「契約の趣旨」に沿っているか、という観点から検討することになります。
契約不適合が存在する場合、修理(請負の場合は元々修補請求は認められていましたが)や代替物の請求、代金の減額も認められることになりました。
実際の契約時の注意事項としては、契約不適合の事実を買主が知りながら契約した場合も契約不適合責任を追及することができてしまうため、そのような場合は契約不適合責任を負わないとすることが必要と考えます。なお、契約不適合責任は任意規定ですので、当事者の合意により契約不適合責任を負わないとすることは可能です。
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【成田法律事務所】
所属弁護士:宮崎 寛之(みやざき ひろゆき)- プロフィール
- 中央大学法学部法律学科卒業、中央大学法科大学院修了後、弁護士登録(千葉県弁護士会)。日弁連裁判官制度改革・地域司法計画推進本部委員。平成29年度千葉県弁護士会常議員。主に、交通事故、労災事故、相続、離婚、中小企業法務(労務問題)を中心に活動を行うと共に、千葉県経営者協会労務法制委員会等の講演の講師も務める。
交通事故解決Q&A
Aさんの車両が信号のない交差点を直進したところ、横から一時停止を無視した車両が突っ込んできて衝突し、Aさんの車両が田んぼに転落しました。Aさんは、骨折等の重傷を負うとともに、顔面に怪我をし、傷痕ができてしまいました。
顔面に傷痕ができてしまいましたが、後遺障害として認められますか。
傷痕の形状や大きさなどによりますが、事故から長期間経過しても身体の人目に触れる部位に人目につく程度以上の傷痕が残った場合、後遺障害と認められることがあります。もっとも、後遺障害の認定基準は細かく定められており、傷痕の部位や大きさ、長さ等が基準に合致しない場合には、後遺障害として認められないこととなります。
本件では、事故から半年以上経過しても顔面の傷痕が消えずに残ったため、医師に後遺障害診断書の作成を依頼し書いていただいた傷痕の図面と病院で撮影していただいた傷痕の写真を添付して、後遺障害申請を行った結果、事故により顔面に5cmの傷痕が残存したとして後遺障害が認定されました。
顔面の傷痕が後遺障害として認められるとどのような賠償が受けられますか。
後遺障害が認定されると、通常、後遺障害が残ったことに対する慰謝料(後遺障害慰謝料)と後遺障害が残ったことによる減収(逸失利益)が賠償されます。後遺障害の程度が重くなるほど、賠償される金額は多くなるといえます。
もっとも、身体に傷痕が残ってしまったという後遺障害の場合、逸失利益について保険会社が支払いを拒否することがあります。
これには、傷痕が残ったとしても労働能力には影響がないはずであり収入は減らないはずである、との保険会社の考えが影響しています。
確かに、事故で身体に傷痕が残ったとしても、仕事に支障なく減収がないという人もいます。しかし、身体に人目につく傷痕が残ることで、就職・転職が困難となる場合や心理的な面で対人業務に支障が出る場合があり、その影響で実際に減収が生じることがあります。
したがって、このようなケースでも、逸失利益の請求をあきらめる必要はなく、実際に裁判例でも逸失利益が認められている事例があります。
本件では、Aさんは顔面に5cmの線状の傷痕が残り、後遺障害が認定されました。
示談交渉において保険会社は、逸失利益は生じないと主張してきましたが、Aさんが事故当時は飲食業に従事していたこと、事故後に接客業務につくことが困難となり退職していること、それにより実際に減収が生じていること等を主張した結果、保険会社も逸失利益を認めるに至り、賠償に応じました。
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【かしま法律事務所】
所属弁護士:村田 羊成(むらた よしなり)- プロフィール
- 中央大学法学部卒業、中央大学法科大学院修了後、弁護士登録(茨城県弁護士会)。現在はかしま法律事務所に所属し、主に、交通事故、労災事故、相続、離婚、中小企業法務(労務問題)を中心に活動を行い、企業から個人の相談者まで、様々なお悩みや問題の解決に向けて奔走している。