2020年11月号: テレワーク導入における労務管理のポイント
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テレワーク導入における労務管理のポイント
働き方改革に伴う法改正を受け、多くの企業において多様で柔軟な働き方の導入が進められています。また、2020年はコロナウイルス感染拡大防止の視点から、急速にテレワークが普及しました。
このような社会情勢の中、2020年10月に開催された千葉経協労働法フォーラムにおいて、テレワークにおける労務管理のお話をしました。以下、Q&A方式でテレワークの労務管理のポイントをお伝えします。
企業にとって、テレワーク導入にはどのようなメリット・デメリットがありますか?
企業側のメリットとしては、
- ①業務の効率が向上(移動時間の減少や業務に集中できる)
- ②有能な人材の定着率のアップ(結婚・妊娠・出産をきっかけにして就業スタイルが大きく変化した人材にとって、時間や場所を柔軟に選択して就業することが可能となる)
- ③賃料の削減や本人の通信機器の利用時は会社の費用負担を抑えられる
- ④怪我などで出社制限がある場合も一定程度の労働力を活用できる
などが挙げられます。
他方で企業側のデメリットとしては、
- ①管理者の目が行き届かない
- ②労働時間の把握のために新たな労務管理ルールやシステムが必要
- ③情報通信機器の管理整備の負担
- ④情報漏洩のリスクが高まる
などが挙げられます。
テレワークの導入にあたって、どのような手順で進めれば良いのでしょうか?
導入手順の大枠としては、現状の把握(IT機器、就業規則・規約・届け出書式等)→対象職種や対象者の決定→ルール・諸規定の調整→社内周知・試行→正式導入となります。特に、ルールや運用を文書化し、諸規定や就業規則の変更、届け出書式等の整備を進める必要があります。
テレワークの労務管理のポイントは何でしょうか?
テレワークの許可基準、就業場所として自宅やサテライトオフィス等を加える、セキュリティソフトの導入、セキュリティルール作り、出退勤の管理システムの変更や導入、出社タイミングの調整、テレワークの許可取り消しの基準作りなどが特に重要です。また、労働者の個別労働条件を変更する場合、テレワークを始めることで就業規則や賃金規定を下回る労働条件の不利益変更に該当しないよう、注意が必要です。
テレワークの労働者の労働時間管理にあたって特に気を付けるべき点は何ですか?
テレワークによる就業は、長時間労働を招いてしまうリスクが高まります。会社は労働者の健康と安全を守る「安全配慮義務」を負っているため、労働者の長時間労働回避の工夫が必要です。始業前や終業後の時間帯のメール・チャットの禁止、システムへのアクセス可能時間の制限や勤務日以外のアクセス禁止、残業・深夜労働・休日労働の申告制や許可制、個々の労働者への注意などを行い、長時間労働の防止に努める必要があります。
テレワークを進めるにあたり、参考となる資料はありますか?
テレワークに伴う労働者の適切な労務管理のために、厚生労働省は平成30年2月に「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」を策定しました。こちらのガイドラインでは、テレワークのメリット、問題点・課題、労働関連法令の適用が非常によくまとめられています。ぜひご覧ください。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/shigoto/guideline.html
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【東京法律事務所】
代表弁護士:谷 靖介(たに やすゆき)- プロフィール
- 東京弁護士会所属。明治大学法学部卒業後、2002年(旧)司法試験合格。2004年弁護士登録(司法修習57期)。リーガルプラスの代表として複数の法律事務所を経営しつつ、弁護士としては主に中小企業の法務労働問題、相続紛争業務を担当する。千葉県経営者協会労働法フォーラム、弁護士ドットコム(法律事務所運営)などの講師を務める。また、NHK、テレビ朝日、FLASH等のメディア取材や日経ヘルスケア、医療介護専門誌への寄稿も多数。趣味は読書、旅行。
交通事故解決事例
20代のAさんは、車を運転し、交差点を青信号で直進していたところ、対向車線から右折車が進入してきて衝突されました。相手方の保険会社からは、Aさんにも20%の過失があるといわれたことから、車の示談の際には、20:80の過失割合で示談をしました。
Aさんは、これから怪我の示談をするにあたって、過失割合が妥当なのかよく分からなかったこと、むち打ちについて治療をしたものの痛みが残っていたことから、今後の対応について弁護士への依頼をしました。
保険会社から提示された過失割合が妥当なのかはどうすれば分かりますか
過失割合は、事故現場の状況(信号機があるか、優先道路か、一時停止の規制があるか、道路幅はどうかなど)と事故当事者の行動(減速をしたか、右左折の合図をしたか、携帯電話を見るなどのながら運転をしていないかなど)から、道路交通法令の違反の有無やその程度、事故の予見可能性と結果回避義務違反を評価して決まります。
実務上は、裁判官が中心となって編集した『民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準』という書籍を参考にして、過失割合を決めることが一般的です。
一時停止をしたかどうかや減速をしたかなどの事故態様について当事者の認識が一致しない場合には、自分の言い分を認めてもらうためには証拠が必要となります。ドライブレコーダーや事故現場付近の防犯カメラの映像などが入手できればいいのですが、このような客観的な証拠がない場合もあります。そのような場合には、警察に人身事故として届出をして、捜査をしてもらった上で、刑事事件記録の入手をする方法があります。また、リサーチ会社が当事者に聞き取りをしたり、事故現場を調査して報告書を作成するといった方法もあります。
Aさんの場合は、検察庁で刑事事件記録の謄写をして事故態様を明らかにした上で、上記の書籍を確認したところ、20:80の過失割合が相当ということが分かりました。
後遺障害に認定されましたが、後遺障害に基づく逸失利益はどのように計算するのですか
「基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」という計算式で計算します。
基礎収入は、原則として事故前の現実収入(年収)となります。ただし、おおむね30歳未満の若年者労働者である場合には、将来、平均賃金程度の収入を得られる可能性が高いものとして全年齢平均年収で計算するのが原則とされています。
Aさんの場合は、事故前の年収は200万円台でしたが、20代と若年であったため、女性の全年齢平均年収である約380万円を基礎収入として逸失利益を計算しました。
労働能力喪失率と労働能力喪失期間は、後遺障害の具体的な内容や程度(認定された等級)から、自賠責保険の基準や裁判例の傾向を踏まえて計算することが一般的です。
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【かしま法律事務所】
所属弁護士:齋藤 碧(さいとう みどり)- プロフィール
- 山形大学人文学部総合政策科学科卒業、大阪大学大学院高等司法研究科修了後、弁護士登録(茨城県弁護士会)。主に、交通事故、労災事故、債務整理、過払い金回収、相続、離婚、中小企業法務(労務問題)を中心に活動を行う。趣味は物を作ること、読書、音楽鑑賞。