2021年2月号: 法改正「パートタイム・有期雇用労働法の対象拡大」について
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法改正「パートタイム・有期雇用労働法の対象拡大」について
2021年4月1日より、中小企業においても「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(通称、パートタイム・有期雇用労働法)が適用されるようになります。
この法律の主たる目的は、いわゆる「同一労働同一賃金」の実現にあります。
1 同一賃金同一労働とは
同一賃金同一労働とは、正社員と非正規社員(有期雇用やパートタイム労働者)の不合理な待遇差を禁止することを指します。
具体的な対応策として、不合理な待遇差の禁止(均衡待遇)と差別的取扱いの禁止(均等待遇)の2つの基準を満たすよう、賃金規程等の整備を行わなければなりません。
(1)不合理な待遇差の禁止(均衡待遇)
均衡待遇とは、各労働者の①職務内容(業務の内容、責任の程度)、②職務内容・配置の変更の範囲(異動や転勤の可能性)、③その他の事情の違いに応じた範囲内で、待遇を決定しなければならないことをいいます。
たとえば、「正社員とパートで各種手当の内容に大きな差があるが、なぜパートに手当が出ないのか、合理的な理由を説明できない」というような場合、均衡待遇に反していないか注意する必要があります。
(2)差別的取扱いの禁止(均等待遇)
均等待遇とは、①職務内容と②職務内容・配置の変更の範囲が同じ場合、待遇についても同じ取扱いをする必要があることをいいます。
すなわち、「正社員と派遣社員がまったく同じ業務内容で、責任も同じなのに、待遇が違う」というような場合、均等待遇に反していないかを慎重にチェックする必要があります。
2 労働者に対する待遇に関する説明義務の強化
パートタイム・有期雇用労働法により、非正規雇用労働者は、「正社員との待遇差の内容や理由」など、自身の待遇について会社(事業主)に説明を求めることができるようになりました。会社側としては、非正規雇用労働者から求めがあった場合は、待遇差に関する説明をしなければなりません。
労働者からの質問に対して十分な回答ができなかったり、回答を無視したりすると、労働基準監督署に申告されたり、裁判を起こされたりするリスクがあるため、注意が必要です。
3 裁判例と今後の対応
過去に、同一労働同一賃金に関する裁判がいくつか起こされ、最高裁判所で判断が示されています。たとえば、平成30年6月1日最高裁判所第二小法廷判決では、運送会社における正社員と有期雇用労働者の間での待遇格差が問題となりました。この事件で裁判所は、無事故手当や皆勤手当、通勤手当について、有期労働者であることを理由に支給しないことは不合理な格差にあたると判断しました。
もちろん、手当の内容や支給要件はさまざまですから、一般的に「無事故手当だから格差は不合理」とまでは断言できません。
しかし、今後は、中小企業においても、このような訴訟リスクに備えるため、賃金や手当の内容について法的なチェックを行うことが重要となっていくでしょう。
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【津田沼法律事務所】
所属弁護士:小湊 敬祐(こみなと けいすけ)- プロフィール
- 中央大学法学部法律学科卒業、中央大学法科大学院法務研究科修了後、弁護士登録(千葉県弁護士会)。主に、交通事故、労災事故、債務整理、相続、離婚、中小企業法務(労務問題)を中心に活動を行う。趣味は自然の中でのんびりすること。好きな言葉は「学問救世」。
遺産分割解決事例
【Aさんからのご依頼内容】
母親が亡くなりました。遺言書はありません。父親は既に亡くなっています。私には妹がいるので、私と妹とで相続手続を進めるつもりでした。しかし、母親の戸籍を取得したところ、母親と前夫との間に子がいることがわかりました。私からみて異父兄の存在が判明した今、自分たちで異父兄と遺産分割の話し合いをすることに抵抗があります。また、私が母親を自宅介護していた時期があります。介護の寄与分を取得できるのでしょうか。
【解決内容】
Aさんが法定相続分に寄与分30%分相当を加えた遺産を取得する内容で遺産分割協議にて解決しました。
【相続人の確定】
民法では法定相続人を配偶者相続人と血族相続人に限定しています。配偶者は常に相続人となります(配偶者相続人)。他方で、血族相続人には優先順位があり、第1順位が子や孫など(直系卑属)、第2順位が父母や祖父母など(直系尊属)、第3順位が兄弟姉妹や甥・姪など(傍系血族)と定められています。上位の順位者がいる場合には次順位の血族には相続権がありません。また、相続人となるはずであった子が既に死亡している場合には、その人の子など(直系卑属)が死亡した子に代わって相続することになります(代襲相続)。
本件では、当職にて相続人の調査をしたところ、異父兄は既に亡くなっておりました。そして、異父兄には3名の子がいることが判明しました。そのため、本来の相続人である異父兄から代襲相続した3名の子との遺産分割が必要となりました。
【寄与分認定の可否】
寄与分とは、共同相続人のうち被相続人の財産の維持又は増加について特別に寄与した者の相続分が増加する制度です。なお、民法改正により令和元年7月1日以降に発生した相続に関して、相続人以外の親族が被相続人の財産の維持又は増加について特別に寄与したと認められる場合には、相続人に対して特別寄与料の支払いを請求することが可能となりました。
Aさんのように自宅介護のような療養看護型の寄与分が認められるためには、親族間で通常期待される以上の特別の貢献、すなわち相続人が被相続人の介護を長期間にわたって専従していたなどの事情が必要となります。
しかしながら、当職がAさんから伺ったご事情からは、家庭裁判所の調停や審判の手続によった場合に認められる程度の寄与行為はありませんでした。
そこで、遺産分割協議において、当職から他の相続人へこれまでAさんがお母様のために行ってきた介護やAさんのご意向をお話したうえで、Aさんに多めに相続させて欲しいことをお伝えしました。
その結果、相続人皆様に事情を理解して頂き、Aさんのご意向通りに遺産分割協議を成立させることができました。
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【船橋法律事務所】
所属弁護士:神津 竜平(こうづ りゅうへい)- プロフィール
- 國學院大学法学部卒業、明治大学法科大学院修了後、弁護士登録(千葉県弁護士会)。主に、交通事故、労災事故、相続、離婚、中小企業法務(労務問題)を中心に活動を行う。趣味は旅行、釣り。