2022年12月号: 景品表示法における不当表示規制について
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景品表示法における不当表示規制について
1 はじめに
今年、回転寿司事業を営む会社が、消費者庁より不当景品類及び不当表示防止法(以下、「景品表示法」)に基づく措置命令を受けたことがニュースになりました。措置命令の理由は、商品の在庫がなく提供できないと分かっていながら、テレビCM等で広告したことでした。
今回は、上記に関連して、景品表示法で禁止されている不当表示について解説します。
2 制度の趣旨
景品表示法とは、商品やサービスの品質、内容、価格等を偽って表示を行うことを規制する法律です。
商品やサービスの内容や取引条件は、消費者が商品やサービスを購入する際の重要な情報となるので、その内容は正確に消費者に伝えられる必要があります。商品やサービスの内容や取引条件について、実際よりも著しく優良または有利であると見せかける表示が行われた場合、消費者は、正常な判断ができなくなります。そのため、消費者を保護するため、景品表示法は、不当な表示を行うことを規制しています。
3 不当表示規制の内容
景品表示法における不当な表示の禁止としては、以下の3つがあります。
- 優良誤認表示(景品表示法5条1号)
景品表示法5条1号は、商品やサービスの品質を実際よりも優れていると偽ったり、競争事業者が販売する商品やサービスよりも特に優れているわけではないのにあたかも優れているかのように偽って宣伝する行為を「優良誤認表示」として禁止しています。
たとえば、①カシミヤ混用率が80%のセーターに「カシミヤ100%」と表示した場合や②「この技術を用いた商品は当社だけ」と表示していたが、実際は競争業者も同じ技術を用いた商品を販売していた場合が典型的な例です。 - 有利誤認表示(景品表示法5条2号)
景品表示法5条2号は、商品やサービスの取引条件について実際よりも有利であると偽ったり、競争事業者が販売する商品やサービスよりも特に安いわけでもないのにあたかも著しく安いかのように偽る行為を、「有利誤認表示」として禁止しています。
たとえば、①一部の当選者が割安で契約できる旨表示していたが、実際は、応募者全員を当選とし、全員に同じ料金で契約させていた場合や②「他社商品の2倍の内容量」と表示していたが、実際には、他社と同程度の内容量にすぎなかった場合が典型的な例です。 - 商品・サービスの取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがあると認められ内閣総理大臣が指定する表示(景品表示法5条3号)
景品表示法5条3号は、商品またはサービスの取引に関する事項について、一般消費者に誤認されるおそれがある表示であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認めて内閣総理大臣が指定する表示を禁止しています。
今回の回転寿司店の問題は、ここで指定されている「おとり広告に関する表示」の一態様である「取引の申出に係る商品・サービスの供給量が著しく限定されているにもかかわらず、その限定の内容が明りょうに記載されていない場合のその商品・サービスについての表示」に該当するとされました。
4 違反すると
景品表示法に違反すると、行政から措置命令を受け、違反企業として公表されることで、消費者からの企業イメージが低下するリスクや課徴金納付命令を受け、多額の支払いを命じられるリスクがあるため、注意が必要です。
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【かしま法律事務所】
所属弁護士:村田 羊成(むらた よしなり)- プロフィール
- 中央大学法学部卒業、中央大学法科大学院修了後、弁護士登録(茨城県弁護士会)。現在はかしま法律事務所に所属し、主に、交通事故、労災事故、相続、離婚、中小企業法務(労務問題)を中心に活動を行い、企業から個人の相談者まで、様々なお悩みや問題の解決に向けて奔走している。
感情的対立に発展した遺産分割協議で、丁寧な協議を行い早期に協議が成立した事案
東京都内の土地が遺産の中心で、当事者間での協議が困難でしたが、弁護士が間に入り交渉を行った結果、代償金提供方式で遺産分割協議が成立した事案となります。
ご相談時の状況
母親の相続に関するご相談で、被相続人である母親の相続人は、兄(相手相続人)、ご依頼者の姉妹(M.Tさん)の3名でした。遺言も残されておらず、法定相続分は、それぞれが1/3でした。
都内の遺産の土地上に兄(相手相続人)が建物を所有しており、その兄が土地取得を希望している様子でした。当事者間で代償金について協議を進めていましたが、金額の開きが大きく、行き違いや感情対立もあり、協議が進まない状況でした。
活動の概要
初回法律相談から継続法律相談では、ご依頼者のM.Tさんが自分で協議を進めるための連絡内容や分割の提案方法について、アドバイスを実施していました。
しかしながら、相手相続人の態度が非常に硬く、納得できる代償金の提供がなされずお困りでしたので、お引き受けすることになりました。
まずは弁護士から相手相続人に手紙をお送りし、相手相続人の自宅を訪問しました。
自宅訪問の際、亡くなられた母親(被相続人)の生活状況など様々なお話をしましたが、相手相続人も遺産分割協議の長期化を望むものではなく、また、家庭裁判所で遺産分割調停や審判になってご依頼者であるM.Tさんの法定相続分(1/3)の土地持分を認められることも困るといった状況でした。
活動結果
相手相続人との協議をふまえて、ご依頼者のM.Tさんと打ち合わせを行いました。M.Tさんも家庭裁判所での調停・審判による解決の長期化や親族間の感情対立を望まないことから法定相続分よりも譲歩をした代償金での解決を提案しました。
相続税申告期限が近づき、小規模宅地の特例を用いて相続税申告を図りたい各相続人の意向もある中、相手からの質問や諸連絡に丁寧に対応し、結果として、短期での遺産分割協議が成立しました。
分割協議の内容に従い、ご依頼者のM.Tさんは代償金を取得することができました。
活動を振り返って
活動開始当初、ご依頼者のM.Tさんは「自分で協議しても態度を変えない相手と、弁護士の協議が進むのか」と、非常に心配されていました。また、遺産をめぐるトラブルに、大変お疲れのご様子でした。
相手と速やかに接触し、その思惑を探ったところ、想定していたよりも相手相続人が紛争の拡大を望んでいないことが判明し、当方で提案方法を工夫したことで、代償金方式による遺産分割を無事に成立させることができました。ご依頼から4か月程度で解決となり、M.Tさんにはとても喜んでいただけました。
遺産分割協議において、お互いの利害や手続きに要する期間・労力・心理的負担を考慮の上で、調整ポイントを見極めて短期で解決できた事例となります。
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【東京法律事務所】
代表弁護士:谷 靖介(たに やすゆき)- プロフィール
- 東京弁護士会所属。明治大学法学部卒業後、2002年(旧)司法試験合格。2004年弁護士登録(司法修習57期)。リーガルプラスの代表として複数の法律事務所を経営しつつ、弁護士としては主に中小企業の法務労働問題、相続紛争業務を担当する。千葉県経営者協会労働法フォーラム、弁護士ドットコム(法律事務所運営)などの講師を務める。また、日本経済新聞、NHK、テレビ朝日等のメディア取材や日経ヘルスケア、医療介護専門誌への寄稿も多数。趣味は読書、旅行。