行政指導・行政処分への対応
実地指導(行政処分)への対策
実地検査・監査の内容とは
都道府県ごとに運用は異なりますが、法令・指定基準違反の防止、介護報酬の不正請求や不適切な介護サービスの提供の防止のため、悪質事業者の排除を目的に実地検査・監査が行われます。選定された事業所については、事前資料の提出、実地検査当日、実地検査結果通知への改善報告書の提出、改善完了報告書の提出などの対応が必要となります。
指導の重点項目は、人員基準、設備基準、運営基準、介護報酬基準などです。監査の重点項目は、不正な手段による指定の有無、無資格者によるサービス提供の有無、人員基準違反がないか、架空水増しなど不正な介護報酬請求がないか、帳簿書類の提出や質問への虚偽回答の有無、業務管理体制の整備、利用料受領が適切かなどです。
行政処分の内容とは
これら指導や監査の重点項目をふまえ、介護保険法に基づく行政指導(勧告)、命令、行政処分等がなされます。悪質な不正請求、虚偽報告、運営基準違反などが発覚した場合、一部停止に止まらず、時には、指定取消、全部取消に至ってしまうことがあります。
介護事業は法律に基づいた認可事業ですので、最新の法令情報のキャッチアップや、内部の管理体制・コンプライアンス体制を整備することで、常日頃から実地指導への準備をしておきましょう。
行政指導、行政処分への対応
介護報酬の不正請求を防ぐため、職員の介護と報酬請求の社内ルールの再整備、管理者教育などを徹底が不可欠です。
また、これら法令遵守の徹底は、職員の定着率アップや勤務意欲にもつながります。万が一不当な指定取消が行われた場合、処分の根拠となる事実認定の誤認などに巡る行政訴訟で争うことになります。
実地検査・監査の流れ
コンプライアンス体制(法令遵守)は定期的チェック
平成24年度の介護保険制度の改正によって、「都道府県」から「市区町村」に実地指導の権限が移譲されました。法令順守できているかについて、「人員基準」「設備基準」「運営基準」などが定められています。
各市区町村のホームページにて公開されていることがあるので、利用してみることも一つの方法です。基本方針、人員に関する基準(職員の配置/非常勤の介護支援専門員/管理者など)、運営に関する基準(重要事項の説明/サービスの提供/要介護認定/身分証の携行/運営規定/勤務体制の確保/広告/苦情処理など)、変更の届出などの項目が監査項目となっています。
普段から法令遵守できるよう組織体制を整えておくことも実地指導に対する事前対策上大切です。
指定取り消し
介護保険法等に基づき、介護保険サービス事業者及び指定介護施設が運営する事業所の指定取消処分を行われることがあります。事業所の指定が取り消されると、少なくとも5年は介護事業を行うことが出来なくなります。適切な事業所運営が不可欠です。
介護事業所の代表的な指定取消事由
- 事業者が当該指定を行うに当たって付された条件に違反したと認められるとき。
- 事業所の従業者の知識若しくは技能又は人員について、基準又は員数を満たすことができなくなったとき。
- 事業者が設備及び運営に関する基準に従って適正な指定居宅サービスの事業の運営をすることができなくなったとき。
- 事業者が、要介護者の人格を尊重するとともに、介護保険法等に基づく命令を遵守し、要介護者のため忠実にその職務を遂行しなければならないという義務に違反したと認められるとき。
- 居宅介護サービス費の請求に関し不正があったとき。
- 事業者が、報告又は帳簿書類の提出若しくは提示を命ぜられてこれに従わず、又は虚偽の報告をしたとき。
- 事業者又は当該事業所の従業者が、出頭を求められてこれに応ぜず、質問に対して答弁せず、若しくは虚偽の答弁をし、又は検査を拒み、妨げ、若しくは忌避したとき。(事業所の従業者がその行為をした場合において、その行為を防止するため、事業者が相当の注意及び監督を尽くしたときを除く)
- 事業者が不正の手段により指定を受けたとき。
指定取り消しの争い方
地方自治体が行った指定取り消し処分を事業者側が争うには、行政訴訟の方法がありますが、自治体側の説明や処分通知書の記載不備や法令違反などを事業者側が立証しなければならず、事業者側が訴訟で勝つためのハードルはとても高いといえます。