利用者に係る諸問題
利用者の財産管理・後見問題
財産管理契約とは
施設の場合、施設入所者から一律に小額の金銭を預かり、そこから日常費等の支払いをすることになりますが、体制作り、金銭管理規定、金銭出納ルール作り、チェック体制などが不可欠です。
これら金銭管理ルールについて、法的な視点を盛り込み、利用者や家族から契約書や重要事項説明書、委任状内に整備をし、保険外費用として費用負担を調整するなどの工夫が必要です。
行政からの指導対象事項になるため、カード・通帳・印鑑の管理方法を整備し、複数の職員のチェックといった不正の防止策整備が不可欠です。
「財産管理契約(任意代理契約)」という法制度も用意されており、判断力が十分な状態でも利用できる財産管理や、身の回りの事柄(例えば、死後の葬儀の手配、事業所への支払いなどを依頼)を弁護士に委託することができます。しかし、これは認知症などにより契約内容を理解できる能力が乏しい場合には、契約自体締結することができず利用することができません。
なお、弁護士に依頼されること躊躇されるような場合には、社会福祉協議会経由で「日常生活自立支援事業」を活用するという選択肢もあります。
- 事業内容
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- 金銭管理、支払い手続き代行サービス(預貯金の出入金/家賃・公共料金等の支払い)
- 預かりサービス(通帳、カードなど重要書類等)
成年後見制度(任意後見制度・法定後見制度)とは
また、認知症が進行すると、自身での財産管理は難しくなります。「成年後見制度」「任意後見制度」の活用が必要となります。後見制度は、判断能力が不十分な人の法律面・生活面を支援するものです。
成年後見人が選任された場合、介護保険利用時の契約や施設入退所手続き、財産管理などを担当し、さらには、悪徳商法などの被害や親族による不正な預金払戻しなどを防ぐことができます。
後見人の担当する財産管理の主な内容は下記となっています。
- 不動産などの管理・保存・処分
- 金融機関との取引
- 年金や所有不動産の賃料管理や金融機関への返済
- 税金や社会保険料の支払い
- 生活費の管理や日用品の購入、公共料金などの支払い
- 生命保険や損害保険の加入継続、保険料の支払い
基本的に後見人はご本人が亡くなるまで活動を続けます。
任意後見制度について
任意後見制度は、自分で財産問題などの判断ができるうちに、自分の判断能力が衰えたり認知になった時に備え、あらかじめ財産等の管理者支援者である「任意後見人」を誰にするか、将来の財産管理や身の回りのことについてどのような支援をしてもらうか、自分で決めることができる制度です。
任意後見人は、基本的にどんな人でもなることができます。自分の子どもや孫はもちろん、親しい甥や姪や親族、信用できる友人、弁護士・司法書士などの専門家もなれます。十分に考え、この人になら自分の財産を任せても安心と思える人に支援をお願いしましょう。身近に頼める人がいない場合は、弁護士や司法所などの専門家を抱える各種団体に候補者の紹介を依頼する方法もあります。
委任事項をどうするかですが、財産管理や身上監護を目的とする法律行為であれば、基本的には広く決めることができます。一方で、介護や身の回りの世話、遺言・婚姻・離婚といった本人にしかできない法律行為は委任できません。何をどう委任するかはとても大切ですので、大事なことですので、できることとできないことを十分に確認し、慎重に検討してみてください。
手続きの進め方として、判断能力がある時点で、公証役場(公証人役場)で任意後見契約を結びます。ご本人の判断能力が衰えてきたら、本人や配偶者などの4親等内の親族、任意後見受任者から家庭裁判所に対し、任意後見人を監督する「任意後見監督人」を選んでもらうように申立てをします。
家庭裁判所から任意後見監督人が選ばれると、任意後見契約がスタートします。受任者は任意後見人として、ご本人のために任意後見契約で定めた契約(法律行為)を実行することができるようになります。後見人の事務については、家庭裁判所の監督を受けることになります。
法定後見制度について
既にご本人が認知症になってしまい、日常生活においても,家族の判別がつかなくなり,その症状は重くなる一方で回復の見込みがない場合、後見人が就任すれば、ご本人の財産管理や身上監護を担当できます。
法定後見制度は,「後見」「保佐」「補助」の3つに分かれます。判断能力の状況や程度など本人の事情に応じて利用できる制度が分かれます。法定後見制度では、家庭裁判所によって選ばれた成年後見人・保佐人・補助人が、本人を代理して契約などの法律行為を代理したり、本人が自分で法律行為をするときに同意を与えたり,本人が同意を得ないでした不利益な法律行為を後から取り消すなどで、本人を保護します。もっとも、日用品(食料品や衣料品等)の購入など「日常生活に関する行為」については,取消しの対象になりません。
後見は判断能力が欠けている方へ、保佐は判断能力が著しく不十分な方へ、補助は判断能力が不十分な方へそれぞれ向けられた制度です。家庭裁判所に申立てをすることができる人は、本人,配偶者,四親等内の親族,検察官、市町村長などです。
親族がご本人から遠方に居住している場合、特に大きな財産を管理する場合、親族間で誰が成年後見人になるか意見の食い違いがある時などは、親族以外の第三者が成年後見人に選任されます。