介護事業に関するさまざまなお悩みをリーガルケア

利用者と事業所職員のトラブル

利用者から職員に対する暴力・暴言・セクハラ

利用者からの暴言・暴力・セクハラと事業者の責任

利用者の中には、加齢による判断能力の低下や精神疾患などを原因として、職員に対して、暴言・暴力・セクハラを行う利用者がいます。

法的な一般論としては、事業者は、利用契約に基づき、利用者の生命身体の安全に配慮しながら、介護サービスを提供する義務を負っています。また、事業者は職員に対しては、安全で健康を確保する義務を負っています。利用者が他の利用者や職員に暴力をふるったり、暴言を吐くような事態への対処を解説します。

暴言・暴力への対処

実際に事件が発生した場合、まずは、被害者の身の安全の確保が必要です。加害者が興奮し、さらなる暴行事件や他者への加害行為を行おうとする場合、身体的拘束も視野に入れます。

例外的に「利用者等の生命又は身体を保護するために緊急やむを得ない場合」にあたるものとして、身体拘束の条件として、(1)他の利用者の生命又は身体が危険にさらされる可能性が著しく高い(切迫性)、(2)身体拘束その他の行動制限を行う以外に代替する介護方法がない(非代替性)、(3)身体拘束その他の行動制限が一時的であること(一時性)を満たすよう注意しながら、経過・状況・結果を必ず記録しましょう。

もし凶器などによる暴力の場合、職員・利用者の安全確保を最優先とするためにも、すぐに110番通報をしましょう。そして、被害者が被害届を提出する場合や告訴状を提出する場合、そのサポートについて、対処方法を検討しておくことが望ましいといえます。

被害者は加害者との物理的な距離を置き、顔を合わせないなどの対応が必要です。他の利用者が被害にあっているのであれば、別フロアにするなどの対処が必要です。被害者に暴行によるケガがあれば、クリニックなどで治療を行いましょう。また、診断書の取り付けを行います。

また、被害者が利用者で反対がない場合、緊急連絡先や家族に事件のことを報告しましょう。暴力被害について、加害者の処罰を求めるかは被害者の考えを尊重して、事業者として協力が必要です。

セクハラへの対処

職員の身体を触る、性的な発言を行うなどのセクハラを行う困った利用者がいます。強制わいせつのような犯罪行為の場合には、刑事事件となる可能性があります。セクハラ行為が止まない場合や強制わいせつレベルのセクハラ行為を繰り返す場合は、退去処分などの厳しい警告措置を進めます。重い犯罪となることを警告する、などの毅然とした対処が必要です。退去処分や刑事手続きの可能性について、弁護士に相談されることをお勧めいたします。

職員への問題行為の防止策について

普段から、以下のような対策が重要となります。

利用契約の条項見直し サービス利用契約の中に「利用者の行動が他の利用者やサービス事業者の生命、身体、健康及び財産に重大な影響を及ぼし、または、そのおそれがあり、本契約を継続しがたい重大な事由がある場合、事業者は、直ちに本契約を解除できる」などの条項を盛り込み、入所時に利用者・ご家族に説明を行うことが重要です。
入所時、サービス開始時の説明 利用者には、入居時の契約書や事業所ルールの丁寧な説明を行います。介護現場でのセクハラは「密室化」しやすく、ご家族への説明が難しい場合があります。そのため、セクハラ行為が発生した時点より、文書など記録に残る形で管理しましょう。
問題行為・問題利用者の共有、警告 サービス時の連絡窓口、防犯グッズの形態、緊急対応のルール化
ポスターやパンフレットへの明示 「暴力や暴言を許さない」「ハラスメント禁止」といったポスターやパンフレットに掲載することも有効です。
サービス・ケア方法の見直し 個室に入る際に扉を閉めない、出入り口に近い位置でサービスを行う、はさみなど凶器になりうるものは利用者の近くに置かない、身体接触のケアは複数で行う、などです。

被害職員のケア

職員の離職防止やストレス軽減のため、対処が必要です。なお、異性間のみならず、同性間におけるセクハラや、女性利用者から男性職員に対するセクハラ行為も成立するため、この点留意しましょう。

セクハラが発生した時点で職員間において「利用者ごとにセクハラが起きやすい状況」など情報共有を行うことが大切です。また、セクハラ行為を繰り返す利用者からの担当者変更なども含め、精神面のサポートや勤務意欲の維持を図る必要があります。

03-6265-1817 平日9時30分~18時まで受付